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高齢者の入浴事故に注意!脱水で死亡することも
からだの機能が衰えてくる高齢者ともなると、外より自宅のほうが安全だとは言い切れません。
実際、自宅で起こる高齢者の事故は外での事故を上回ります。
高齢者の家庭内の事故と聞いて思い浮かぶのは、転倒・転落であったり食べ物の誤嚥であったりします。
そして、お風呂で倒れる・溺れると言ったこともまた、数多く発生します。
滑って転ぶなどの物理的な事故や、血圧や体温の上昇・低下で起こる体調変化による事故など、お風呂には高齢者にとって危険がいっぱい潜んでいます。
入浴時の事故は死亡につながることも
歳をとると心臓や血管の機能や耐久性も落ちてきますね。
若い頃に比べると、危険を察知するのが遅れたり、気づいても反応するのが遅れたりします。
脱衣所と浴室との気温差、お湯の温度などが影響して血圧が急上昇したり低下しすぎたり。
また、肩までつかる風習のある日本の深型の浴槽では、心臓に水圧がかかり、お湯に長くつかっているほど負担は大きくなります。
お風呂に潜む危険
転倒
足が弱くなってきている高齢者は階段の昇り降りはもちろん、居室内でも転倒事故が発生しやすくなっています。
同じようにお風呂場でも転倒のリスクは高く、これはお風呂の床が濡れているため滑りやすいことに起因します。
狭い浴室内だと転倒したときに頭を打つ可能性も高く、脳震盪や骨折などの重大な事故につながることもあります。
湯船に前のめりに倒れたらどうなるでしょう。
浴槽のほうが低い位置にあるため、湯船から頭をあげることができずに溺れる危険性があります。
ヒートショック
冬場の入浴時には、部屋の中と脱衣所・脱衣所と浴室・浴室内と湯船の中などの寒暖差によりヒートショックと呼ばれる急激な血圧の変動が起こりやすくなります。
脈拍数の急増や、血管が破ける・血流が低下するなどで脳卒中や心筋梗塞、意識障害が生じ、急死を招くこともあります。
コレステロールが溜まって血管内部が細くなっている・血管の弾力が弱くなっているなど、高血圧気味の場合は特に気をつけないといけません。
溺れる
脳卒中などが直接の原因で亡くなることもありますが、多くの場合は湯船で失神することによる溺死と考えられています。
ヒートショックが元で意識障害が起こると、湯船の中で動けなくなったりスーッと眠ってしまうこともあります。
肺にお湯が入り込む・息ができなくなるなどで、お風呂のお湯で溺れてしまうわけです。
立ち上がりざまの、急な脳の虚血状態よる失神で溺れることもあります。
長くお湯につかることで血圧が低下すると脳に送られる酸素量が不足します。
その状態で急に立ち上がると、めまいやふらつきが起こります。
高齢者や子どもに多く、失神することもある脳貧血(起立性低血圧)と呼ばれるものです。
10分以上お湯につからない・じっとしたままの状態からいきなり立ち上がらないのが肝心です。
やけど
これは若い人にも言えることですが、ついうっかり温度を上げたままのシャワーをかけてしまったり、浴槽のお湯をかき混ぜないままかけてしまったりしてやけどすることがあります。
介護施設での入浴時は、まず体温や血圧を計りますね。
その結果次第で中止にしたり、早めに切り上げたりもするわけです。
さて、施設・自宅に関係なく、高齢者の入浴時の注意点は何だと思いますか?
ええと、まず、床で転ばないよう気をつけるとか、足元に障害物がないか確かめるとか…
あと、熱いお湯に気をつけることだよね?
湯船をかき混ぜてやけどしないようにするとか…
それとヒートショックを起こさないように脱衣所の温度を上げておくでしょ。
あっ、そうそう!
浴室内は、入る前に予めシャワーのお湯を流しておいて温めるといいんだ。
そうですね。
ほかには?
ええっ!
他にもまだあんの!?
ええと…
あああ、そうだった!
お風呂に入る前と出たあとには150~200mlの水分補給しないと、脱水症状起こしちゃうよ!
これすごい大事じゃん!
脱水もあわせて、あと、長風呂にも気をつけないといけません。
とくに熱めのお風呂が好きな人は、体温の上昇に注意が必要ですよ。
脱水に注意!意識障害は熱中症が原因かも
熱中症は炎天下の外でだけ起こるとは限りません。
お風呂に入ると気持ちいいし、からだを清潔にするために必要なものですが、体力を消耗しますね。
そしてかなり汗もかきます。
温かいお湯につかって気持ちいいと感じている間に、からだからどんどん水分が抜け出ているわけです。
発汗による水分不足やお風呂の温度や湿度などで、からだの表面だけでなく、深部の体温も上昇します。
入浴中に熱中症にかかってしまい、吐き気やめまい、徐脈や意識障害が現れます。
42~43℃の熱いお湯が好きで、じっとつかっている人をジムのお風呂で見かけることがあります。
けっこう高齢な人に多く見られますが、歳を重ねると熱さや暑さを感じにくくなるので注意が必要です。
ストッパーが効かなくなって倒れる
暑い真夏の日でもエアコンをつけず、水分も摂らずに過ごして、突然倒れ込む高齢者の数は少なくありません。
入浴中も同じことで、体調は限界に来ているのにそれに気づかず、いつまでも熱いお湯につかっているために発作が起きてしまうこともあるわけです。
それが、お風呂での熱中症です。
湯船でからだが動かなくなったり意識を失って溺れることは、死亡原因としては脳卒中や心筋梗塞などの疾患よりも多いとされています。
人間のからだは半分以上が水分です。
水分量は子供の頃で70%、成人だと60%ですが、歳をとるにつれ徐々に減っていき、高齢者は50%ほどになってしまいます。
体内水分量が少なくなっている上に暑さに対しての感覚が鈍くなっていると、意識して水分摂取を心がけないと熱中症にかかりやすいというわけですね。
お湯の温度は41℃以下で、10分以上つからないようにし、なおかつ入浴前と後にはコップ1杯程度の水分を摂るようにしましょう。
汗とともにミネラルも失われます。
ただの水よりもスポーツドリンクのほうがおすすめです。
あとがき
私も子どもの頃に湯船から立ち上がったとき、急に目の前が真っ暗になったことが何度かありました。
高齢者や子どもに多いとされる起立性低血圧だと思われます。
けっこう長風呂だったんですが、お湯につかっているときはなんともないのに、出た途端にクラッとくるわけです。
つかっている間に、まさに知らないうちに体調に変化が起きてたんですね。
もちろん高齢者にも起こり得ることです。
介護現場では独りで入浴できる人でもきちんと見守りしていますが、中にはふらつきが心配な人がたまにいます。
自宅に心配なお年寄りがいるご家庭は、こまめに様子を見に行くことをおすすめします。
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